展示会構成

4章 構造的暴力 わかちあう希望―究竟へ追いやられる人々

貧困
宝物を探して

「不可能なんていう言葉は、そう決め付ける心の中にあるだけだ」 たった一人ではじめた青年がいた 骨と皮になって倒れていく友だち、無表情にうずくまる子どもたち 「無理だよ」 だれもが言ったがあきらめなかった やがて驚異的な収穫増加で7千万人が餓死から救われた 世界は彼をインド「緑の革命」の父・スワミナサン博士と呼ぶ 貧困と食料不足に立ち向かうケニアの女性がいた 苗木を植えて緑を増やす運動を始めた 「女性になにができる」とばかにする人もいた しかし多くの女性があとに続いてくれた 苗木を植えるたびに、彼女たちの中に「自信」が芽生え、生きる力が湧いた ワンガリ・マータイ氏達が植えた苗木は、アフリカ全土に広がっている 「自分の家族を含め、数百万人が苦しむ厳しい貧困と闘おう」 そう決意して行動を開始したセネガル15歳の少年マラル 彼は絶対的貧困に取り組むグループ「ATD 第4世界」のメンバーとして 国連の会議に参加し、貧困の現状を訴える 若い世代に貧困と立ち向かうことを呼びかける マラルの挑戦は今はじまったばかり ワンガリ・マータイ氏は語る 「他人に奉仕すれば、何事にもかえがたい 特別な幸福が返ってくる」 宝物は希望をあきらめない人の心にあった

HIV / エイズ
美しき連帯は今日もたたかう

自分の中で善と悪が闘っている 今日も体中の血液が「生きろ」と止まることなく流れている だから、恐怖に負けられなかった 黙っているわけにはいかなかった このウィルスは治療によって共生もできるのだ すべてが一瞬にしてなくなっていった 何よりも怖かったのは、病気に対する偏見だった 「悪魔の烙印」は簡単におされた 「HIV/エイズと闘うのだ。 見えない魔性と闘うのだ」 善なる魂は連帯した 「一緒に闘おう」「大丈夫、1人じゃない!」 陽性者ネットワークはあっという間に地球をかけめぐった 不思議にも、国境も文化も宗教も言葉もらくらくと飛び越えていた 固い団結と友情が、一人ひとりに再生の力を吹き込んだ 運命をただ待つ者から 苦悩と痛みを共に分かち合い、希望を与え合うリーダーへと成長していった バングラデシュのナスリーン氏は語る 「私たちが沈黙の殻を破り、力を合わせて社会の先頭に立てば 世の中のHIV陽性者への偏見や差別をなくすことは可能です」 どこよりも美しい連帯が今日もまたウィルスと、偏見や差別と そして、絶望と戦い続けている

病気
すべてが「生きるための宝物」

1931年、ある村で高熱を出して倒れる人が続出した 翌日、高熱を出したものは、家からいなくなっていった 野球選手を夢見ていた少年、都会で新しい生活をはじめようとしていた女性 何も告げず、二度と帰ってこなかった 病気の名は「ハンセン病」。その名は当時、日本中を震撼させた 人々は知らなかった。 いや、知らされていなかった 「ハンセン病」は自然治癒もあるほどの感染力の低い病であることを 「貧乏病」と呼ばれ、健康であれば伝染しないということを 自分達の「人間としての尊厳」を取り戻すために 患者たちは力を合わせて立ち上がった 戦いは長かった。 でも、あきらめなかった 平成13年、国家は過去の誤りを認めた 勝利だった。 今、次のステージへ 完全勝利を目指して尚も闘い続ける人々の姿がある 尊いその人達は語る 「手足に残る病気の跡はがんばって生きてきたあかしです 私も不自由な手足と身体を誇りと思い、恥ずかしいとも思いません 人間には長所と短所もあります。 そのすべてが、生きるための宝物です」 “自分が抱えている、その全てが生きるための宝物” 21世紀を担う子どもたちへのメッセージだった

ホームレス
人のために真剣に生きる

キラキラ光る黒い瞳が印象的だった 節くれてごつごつした手は日に焼けて黒かった その手でどれだけの人の背中をさすってあげたのだろう・・・ よく微笑むその顔もまた、 日に焼けて浅黒く、 深い皺がたくさん刻まれている その皺の深さが、 彼が立ち向かってきた「人生」を何よりも物語っている 「一人一人と会う、 これが本当の勉強だと思う。人のために真剣に生きる。 これほどの充実感はない」 彼は3000人以上の“ホームレスとして生きる人”、「野宿生活者」に 会ったと言う ある老人と温かいご飯を久しぶりに食べた翌日、 老人は凍死 くやしかった 「野宿生活者といっても同じ人間。 いい人もいれば、 悪いヤツもいます 表面ではなく、 心が美しいかどうかなんです お金の前に大切なものが100以上あるはずです」 圧倒的な生と死のドラマがいつも街の片隅で繰り広げられている 存在そのものを否定され、 言い知れない寂しさと恐怖がつきまとう 「心のケアに半年、 体の治療に半年、 それから仕事のことを1年かけてやる。 2年はかけないと、 自立への道は遠いと思います」 明日もまた街角で誰かの傍らに寄り添っているのだろう 彼は住所のない「家」に戻っていった。 彼もまた野宿生活者なのだ

自殺
闇と光のはざまで

何かに必死につかまろうとしていた どんなに力をこめてつかんでもずるずると落ちていくようだった 不安、 恐怖、 絶望、 空白・・・ 心は幾重にも巻きつけられ 太陽はもはや自分には関係なかった 「なぜ? 自分が?」 こんな疑問だけが頭の中で回っていた 何度も想像した どうやって死ぬかということを・・・ そんな時に出会った言葉 「善きことを一つでもできるうちは 勝手に人生から離れてはならない」 数えるのをやめてみよう 自分に何ができなくなったかを 自分の手からこぼれてしまった幸福のかずかずを むしろ、 自分にもまだできることがある それだけを考えて生きてみよう

ページトップへ