展示会構成

3章 差別 こころは拡がる―差別との出会い。

生まれによる差別
しあわせの連鎖へ

当時17歳の少女は愛し合う男性と結婚できなかった 彼は結局、自分と同じ身分の女性と結婚したのだ 彼との子だけが彼女の元に残された 父親の名を名乗れない、市民権のない子だった 彼女の身分は「バディ」―売春が仕事だった 身分にしばられた社会で生きる彼女には それ以外の仕事がなかった しかし、NGOの援助もあって、彼女は八百屋を開店できそうだ 成長した彼女の娘は語る 「高校を卒業したら、母と一緒に住もうと思います 母はこれまでつらい思いをしてきました 私は将来、看護師になって人のために役立つ仕事がしたいです そして母を助けてあげたい」 母は語る 「私たちバディの女性に必要なのは技術や雇用機会を得ることと、 人間の尊厳です」 だれもが平等に受け入れられる社会こそ人間の社会だ 母娘の挑戦は続く

先住民族
すべての伝説はここから生まれた!

世界にまだ「国境」なんていう線がない時代 人々は太陽や森や川と対話をしながら生きてきた 命という言葉が全てをやさしく包む中 人は自然から「生きる力」をもらった そうだ、僕らの中にある「生きようとする力」 それは地球の全ての生命とわかちあっているものなんだ 忘れてないか? 世界は「不思議」という名の一つのアイランド 紺碧の海に浮かぶ太平洋諸島のひとびとは 地図もコンパスも使わずに500kmを超える航海をする 七色のオーロラの下で生活するイヌイットのひとたちは 記憶だけでほぼ正確な地図を書くことができる 地球の半分以上の森林をもち、世界の大半の生物と 共生するアマゾンの先住民族は 6500種類の植物を薬として使うことができる 今も大切なことを忘れないひとたちがいる 大切なことを守るために闘うひとたちがいる 「我々の言葉で、『生きる』ことは『呼吸』と同じです 宇宙の全ては呼吸しています 宇宙の全てと呼吸を共有しているのです」

外国人
人間としての目覚めの大地へ

見上げた空はなつかしい故郷にも つながっている だから、どんな時も顔をあげて生きていこうと思った ブラジルで生まれた少女が 両親のふるさと、日本に来た 学年が合わないと言われ、高校に入学できなかった 日本語がわからない、つらい年月が過ぎる 志のある日本人の友達とボランティア活動をする中で 半年くらい経ったある日、急に日本語がわかるようになった 通訳として日本の会社で働いた 4年後、上司は在日ブラジル人の一番の理解者となった 「今いるこの場所を、どんな国の人でも住みやすい場所にしていきたい」 彼女の夢は更に広がる 「今日も新しい漢字を覚えたよ」と誇らしげに少年は微笑んだ 日本語がよくわからないお母さんのかわりに必死で漢字を勉強している タイから出稼ぎに来て日本で結婚した両親 しかし、お父さんは強制送還され、母は小さな息子と取り残された 少年はボランティアの協力で、小学校に入学 お母さんに日本語の本を朗読してあげるのが、彼の日課だ 在日コリアンとして日本の大学に学ぶ女性がいた 中学時代に朝鮮民族が日本人から受けた非道な歴史を知り、怒りに燃えた しかし、大学の創立精神「平和のフォートレスたれ」に共鳴し、入学 反面、日本に同化していくのは背信行為ではないかという葛藤もあった そんな時、尊敬する師より励ましの言葉 「大事なことは、未来に向かって、皆が幸福になるために、 いかに生きるかです」 彼女は決意する。 ここが、私の人間としての目覚めの大地だ

障がい者
心は飛翔する

朗読:関根正明

からだの奥底から渾身の力を出して生きてきた 歩くことも、食べることも、手をたたくことも、笑うことさえも 時には必死だ 「流されるままに」なんて、気楽なことは言っていられない だからこそ、一日一日がかけがえのないものに感じる 「障がい者は弱いのではなく、本当は強い!」 そう話す姿は自信に満ちている 聴覚に障害をもつため、就職活動で即座に採用対象から外された 「なにがあっても、諦めるな!」 父の励ましで、就職を果たす。48社目の会社だった 小児麻痺になり、身体障害をもって生まれてきた コンプレックスで下を向いていた日々 生きる意味がわからなかった 27歳の時、尊敬する師匠の言葉で蘇生する 「困難を乗り越えて、同じ境遇の人を励ましていく使命がある」 「この体が宝物なんだ!」と心のそこから思えるようになった 「精神病なんて、弱い人間のなるものだ」と蔑まれた 自分にしか聞こえない声に恐怖を覚え、夜も眠れなかった 「世界のすべての人が敵になっても私は味方です」 暗闇に光がさすようだった 足取りは重いかもしれない けれど、歩んだ距離はなによりもかえがたい

性的少数者
自分自身を生きることへの よろこび

耐えられなかった 本当の自分を偽って生きることに 周囲に何を言われるかわからない でも、踏み出そうと思った 体も心も自由に呼吸してみたい。 そんな気持ちだったから 「ぼくの好きな人は男性です」 「体は男性だけど、心は女性なんです」 「性欲そのものがない。 恋愛感情自体がわかないんだ」 「私の体、30才まで女性だと思っていたけれど、その後 体が男性化していきました」 一人、一人にゆっくり、着実にカミングアウトしていった 心の衣をはがす度、本来の自分がよみがえる 胸をはってある人は語る 「女性で生まれたけど、自分ははっきり言える。 男性だと それでいいと思えた時から、それを周囲に言えた時から もっと生きようと思えるようになった 男性、女性の前に一人の人間として、自分らしく生きていきたい」 その姿は何よりも美しく力強い ありのままの自分を大切にして、初めて、他人を大切にすることができる 他人と違う自分を認めて、初めて、他人の違いを尊重することが出来る その人を囲み、感動と賛同の拍手を送るあたたかな人たちもまた輝いていた

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